アップライトピアノと防音室を持っているのに、中華製の電子ピアノを買ったら楽しかった話
僕はピアノを弾くことが趣味です。
自宅には YAMAHA b113 というアップライトピアノがあり、
マンション住まいなので防音室を設置しています。
そんな僕が中華製の電子ピアノを追加で買ったら、色々と楽しかったという話をします。
ピアノと防音室のある生活
ピアノを弾く人であれば、できるだけアコースティックピアノ――
つまり電子ではない 「生ピアノ」を弾きたい と思うものです。
ただ、生ピアノは音量が大きく、マンションでは騒音問題になりやすい。
その解決策が防音室です。
防音室があれば、マンションでもほぼ一日中、音漏れを気にせず弾けます。
僕は6年前に YAMAHA の『アビテックス』という防音室を購入しました。
ピアノと合わせて約200万円!!
当時の僕にとって大きな決断でしたが、それに見合うほど大きな満足を得られたと思っています。
ただ、防音室は狭く、音もこもりがちです。
ピアノの大きな響きが反響してしまって抜けていかない。
その上、生のピアノは繊細で、指と耳の神経を研ぎ澄まさなければ良い音が出せません。
集中して弾けば素晴らしい音で応えてくれるけど、
失敗すると、とても耐えられない音が耳に響く。
だから上達する。
そんな防音室で弾くピアノとは「癒やし」というより「修行」に近い存在でしょう。
疲れている時は、防音室のドアを開けることがおっくうになることすらあります。
きっかけは「寝室の余白」
そんなある日、部屋の整理をしていたら、寝室にちょっとした空間ができました。
そこでふと、よぎったのが
「ここにピアノを置いたらどうだろう」
ということでした。
- 朝、目が覚めたらすぐ鍵盤に手を置ける
- 夜、寝る前に静かに弾ける
そんな“生活の中にあるピアノ”があったら素敵じゃないかと思い始めました。
家具ピアノへの憧れ
電子ピアノは、家の中にあるものとしては重く、存在感がありました。
しかし、最近は“家具のようなピアノ”というジャンルがあります。
Roland KIYORA がその代表格です。
木目調でスタイリッシュなデザインでありながら、高音質。
今回、まず一番目に想像したのがこのKIYORAでした。
ただ、価格は40万円以上。さすがに手が出ません。
中華ピアノとの出会い
そこで Amazon を覗いてみると、
Donner、Terence、Longeye など、聞き慣れない中華ブランドが並んでいました。
値段は3〜4万円
しかもデザインは北欧風でスタイリッシュ!
「安かろう悪かろう」と思いきや、調べるほどに興味が湧いてきました。
- ピアノの演奏感に近いハンマーアクション搭載
- 音源はフランス製の DREAM チップ
- レビューも意外と良い
- 見た目がいい
- 安い!!!
今や “工業製品は日本製!” という時代ではありません。
PC、スマートフォン、家電、オーディオ機器、中国製で高性能な製品が当たり前です。
それに、西洋人モデルを起用していることが期待を増幅させてきます!
西洋のイメージ → (中国人の考える)「ヨーロピアンな音」にチューニングしているんじゃないでしょうか。
──ここで僕の“実験好き”に火がつき、気がついたらAmazonの注文ボタンを押していました。
TERENCE P37、到着!
届いたのは Terence P37という製品です。
箱を開けた瞬間に、さっそく中華クオリティ炸裂!
マニュアルのホチキスで紙を被せて訂正してる😂
ネジ穴はコート紙の内側に隠れていて針で突いて発掘🤣
でも、組み上がってみれば木目が美しく、思った以上に部屋に馴染みました。
音を出してみると……明るい。とても明るい。
まるでヨーロッパの石造りのホールのような軽やかさ。(日本人の想像←)
鍵盤やペダルはアコースティックピアノに慣れてきた僕にも意外と違和感がありません。
ペダルはハーフペダルには対応していないようですが、全然気にならないです。
一方で、スピーカーからは「サァー」というホワイトノイズ。
これも中華ならでは「味」というのでしょうか。
あ、電源の切り忘れを防げていいね!😅
……イヤホンや外部スピーカーに繋ぐと軽減するのが救いです。
MIDI実験ログ 🎛
さて、ここからが本番!
P37 の背面には「MIDI」と「MP3」という謎のUSB端子があります。
- 「MP3」の方は存在意義不明です。スマホの低速充電ができるようです😂
- 「MIDI」の方に Type-B ケーブルで Mac と繋ぐと、なんと USB-MIDI デバイスとして認識!
そう!P37はピアノ単音色の電子ピアノですが、内部のDREAM音源はGM準拠!
つまり最低でも127の音色がインストールされているはず!
上手くいじればオルガン、ギター、ドラムの音を出して、
キーボード遊びができるのではないか!
と狙いがありました。
こうした、日本製品では塞がれてしまいがちな “仕様外の遊び方” ができるのも、
中華製品ならではの楽しさです!
🎼 実験1:Aria Maestosa
Aria MaestosaはMac対応のオープンソースのシーケンサーソフトです。MIDIキーボードから入力してMIDIデータを編集することができます。

できたこと: MIDI入力、出力
- 録音:鍵盤入力がピアノロールに記録される!
- 再生:その通りにピアノが鳴る!
早速、MIDI音源、MIDIキーボードとして利用可能なことを確認できました!
できなかったこと: リアルタイム入力・再生
一方で、リアルタイム音色切替は不可のようです。
ピアノをオルガンにしたりして遊ぶことはこのソフトではできないようです。
🎚 実験2:MidiPipe
MidiPipe は MIDIメッセージをリアルタイムでルーティング、変換、フィルタリングするソフトです。
これで、ピアノから入ったメッセージを、またピアノに戻す、いわゆる「ループバック」ということをやろうと思います。
ループバック経路に途中で Program Change という命令を差し込めば、任意の音色に変化させられるという作戦です!
非常に90年代のMIDI遊びの様相を呈して来ました😁

できたこと: ループバック、Program Change
ピアノからオルガンの音が!
ループバック成功しました!!
できなかったこと: ピアノ音の消し込み
……でも、鍵盤を押すと同時にピアノ音も鳴ってしまう😂
消音コマンド 0xB0 (Control Change) - 0x7A - 0x00 送ってもピアノ音は頑固に残る。
流石にピアノとしての機能を殺すことは想定されていないようでした。
🎧 実験3:GarageBand
GarageBandは、Apple製の無料の音楽制作ソフトです。
無料とはいえ、プロの音楽家も利用するほどの高性能!
ループバック機能のほか、ソフトウェア音源機能もあります。
- GarageBandを起動し、入力出力をUSB MIDIに設定
- プロジェクトを作成して、MIDIトラックを追加
- 音色を選ぶと、ピアノからソフト音源の音が出る!
- このソフト音源の入力(USB Audio入力)の音量制御はPC側のようです
- 一方ピアノ本体の音量を0にすればピアノ音を消せる!
できたこと: P37の多音色・チューニング機能付き高級キーボード化🎉
- P37でギターやオルガン、ドラムの音を出す
- その音色のリバーブやEQを調整して独自のチューニングを施す
結果:超高級電子ピアノ化成功! 🤣
ソフトウェア音源とはいえ、最近のMacなら、この程度のことで遅延はありません!
これであの明るい「ヨーロピアンの夢」みたいなピアノ音色に飽きても、重音重々しい音色にも、リバーブをマシマシにしたまろやかな音色にも自在に変更できます!😄
実際の使い方
いろいろ試した結果、次のような使い方をするのが実用的だと思いました
- 夜、寝室で窓の外を夜ながらノクターンを弾く(with ヘッドフォン)
- 仕事の休憩中にポップスで気分転換
- Android タブレットを譜面台に置いて楽譜閲覧(低速充電付き)
- Mac に繋げば MIDI 録音キーボード
- GarageBand 経由でオルガンにも、ドラムにも化ける!
まとめ:「修行」と「遊び」の二刀流
こうして僕の家には、2台のピアノが並びました。
- “修行ピアノ” の b113
- “遊びピアノ” の P37
ふとした衝動で買った中華ピアノでしたが、
結果的には「もう一度ピアノを純粋に楽しむきっかけ」になりました。
防音室の扉を閉めた“静寂の修行”と、寝室の片隅での“気軽な遊び”。
今の僕にとって、どちらも、大切なピアノ時間です。
